フルートと笛吹き女の話 (第3話)

「フルートと笛吹女(第2話)」からの続き)


ついつい利便性を求めたくなるというのが人間という生き物の性。そしてそれがゆえに、世の中は進歩してきました。
音楽でもその流れは同じで、フルートにおいてもそれまで演奏しづらかった調をもっと“便利に”演奏できる楽器の開発が進むことになります。

すなわち複数のキーを持つ多鍵式フルートの誕生です。

古典派の時代に活躍し、クラシカル・フルートとも呼ばれる多鍵式フルートですが、作られ始めたのは1750年代のイギリスだと考えられています。それから他の地でも多鍵式フルートが作られ始め、そしてどんどんとキーの数が増えていき、4鍵式、6鍵式などなど・・・さまざまな多鍵式フルートが乱立する時代に突入します。

各地の製作者たちが試行錯誤を重ね、それまで演奏しにくかったD-dur以外の半音の音がキーを押さえることで明るく鳴るようになり、不安定さがカバーされていきました。

現在メインで使用している6鍵式のクラシカル・フルート。
パリのThibouville-Cabartのオリジナルで、100年以上前に作られた楽器

クラシカル・フルートではそれまでのバロック・フルートでくすんでいた音や調性が、キーを使うことで明るく響くようになりました。

バロック・フルートの最低音はDですが、クラシカル・フルートの中では半音低いCisやさらにその下のCまで演奏可能なものもあったそうです。

こうして時代のニーズに応じ、姿を変えていったフルートですが、現在から見るとそれは一概に“改良”とは言い切れないと思います。

どんな楽器で演奏したってバッハもモーツァルトも素晴らしい音楽です。でもそれぞれのフルートにしか出せなかった音や表現があり、それは楽器の姿が変化することによって残念ながら失われていきました。
これまでに作られた作品をすべて当時の楽器で演奏するというのは物理的になかなか難しいことですが、当時の楽器を知ってこそ、作曲者が思い描いていた音楽に歩み寄れるのではないかと私は思います。

ドイツで師事していた恩師、マルテン・ロート先生はよくレッスンで、

「君にとって一番良い先生は楽器だよ。」

とおっしゃっていました。その時代の楽器で演奏すれば、曲がどういう表現を求めているのかを楽器が教えてくれる、と。

・・・・今回はバロックと古典派、それぞれの時代に活躍したふたつのフルートについてのお話でした。

それぞれのフルートの音色、それぞれの時代の音楽を聴きたくなりませんか・・・?



(さて、ここからは通販番組のような展開をお楽しみください。)

なななんとっ!!!

3月30日に福岡のメディアファイブサロンで、

フルートとギターの饗宴「バロックから古典へ」 を開催いたします!

このコンサートでは、今回紹介いたしましたバロック・フルートとクラシカル・フルートを演奏いたします。

フルート・永野伶実とギター・松本富有樹で、バロックから古典の音楽を、それぞれの時代の楽器でお楽しみいただくコンサートです。
フランスで楽器製作者、作曲家として大活躍したオトテールの作品や、ウィーン古典派に作曲家、ギタリストとしても活躍したマティエカの作品などを演奏いたします。
2つのフルートと、バロックと古典それぞれの時代のギターの音色を一晩でお楽しみいただけます。

ご来場お待ちしております!

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