ご挨拶

 バロック時代(1600年から1750年ごろ)、今に残る当時の文献を紐解くと、「良い趣味で施される装飾音」、「はなはだ趣味の良い演奏法で・・」などと、音楽シーンにおいて『良い趣味Bon goût(仏)ボングウ』という言葉が頻繁に使われていたことが分かります。即興性の高かった当時の音楽では、書いてある音符を忠実に再現することよりも、演奏によって奏者の「趣味」が現れることの方が重要なことだったのです。
 はたして彼らの言う「良い趣味」とは何を示したのでしょうか?それはもはやタイムスリップをして当時の人に直接聞いてみるほか知る由もないのですが、煎じ詰めれば「自然にあらがうことなく」、「より善い(美しい)ものを追い求める」姿勢のことなのではないでしょうか。

 2020年、人類は「新型コロナウィルス感染症」という100年に一度とも形容される世界的危機に直面しました。人々は日常的にマスクを着用し、外出を控え、「おうち時間」が増えました。「ソーシャルディスタンス」という新しい生活様式によって、本来人と人との間にあるべき「コミュニケーション」の時間が著しく低下しました。しかしまた、その特異な状況において改めて気づかされたことも多くあります。まずは「今までの日常のありがたさ」。そして「人と人とのコミュニケーションの重要性」です。
 人は主に「言葉」によってコミュニケーションを図ります。しかし時に言葉はその具体的すぎる性質から、誤解の原因ともなり、また誤解への不寛容さをも助長させます。その意味において、「音楽」は我々人類が持つ最も寛大で普遍的なコミュニケーション・ツールなのだと思います。

 未曾有の世界的混乱の影響下、新設サイト「ぼんぐう」は始動します。まずはインターネットのネットワークを使い、九州各地の古楽奏者をつなぎます。今まで点で活動していた動きが線となり、やがて円を結びます。そうすることで九州全体の古楽の盛り上がりを推し進め、新しいユニットや演奏会の開催を促進します。
 また当サイトのホーム会場となる「メディアファイブ サロン」にて、定期的なサロンコンサート、講座等のイベントを企画、より気軽に身近に古楽を楽しんでいただく場を提供していきます。サイト内では各奏者のプロフィールや演奏会情報、古楽豆知識コラム、会員向け動画配信等によって古楽を多角度的に楽しんでいただける工夫をいたします。

 九州は長年に渡って続く古楽音楽祭をはじめ、古楽の盛んな土地柄です。その土壌を培ってきた、今まで九州の古楽シーンを支えて来られた先輩方の思いを引き継ぎ、我々の世代における新しい繋がりの可能性を創作することで、多くの皆さまと音楽を通したコミュニケーションの輪が広がる、そんな活動になれば幸いです。

太田耕平
ぼんぐう代表 太田耕平