フルートと笛吹き女の話 (第2話)

バロック・フルートを吹いていると時々お茶漬けが食べたくなります。
(詳細は後述・・・。)

「お茶漬けが食べたい・・・」by Hotteterre

ぼんぐうをご覧の皆さん、こんにちは!
フルート奏者の永野伶実です。
今回は『フルートと笛吹き女のお話』第二話です。

第一話は私がバロック・フルートに出会うまでのお話でした。
今回はそのバロック・フルート、そしてクラシカル・フルートについて書きたいと思います。

バロック・フルートのいわゆる一世代前の楽器であるルネサンス・フルートは、分割のない一本の円筒形に6つの指孔が開けられた構造でした。それがバロック時代には3分割できる円錐形に姿を変えていきます。7つの指孔に加え、右手の小指が担当するDisキーが付けられたことも大きな特徴です。

現存する最古のバロック・フルートは、オランダの製作者R.ハッカのものだと言われていますが、あくまで現存する中でであって、誰が作り始めたのかは分かっていません。

その後フランスではオトテール一族をはじめとした楽器製作者たちが、このバロック・フルートの改革を推し進め、3分割式で円錐形のバロック・フルートのスタイルを確立していきました。そしてフランスではバロック・フルートが大ヒット。数々の名曲が誕生し、フルートの黄金期と呼ばれる時代が訪れることになります。

現在メインで使用しているバロック・フルート。2020年サイモン・ポラック氏作。
モデルは18世紀イタリアのC. Palanca

バロック・フルートは全ての指孔をおさえた状態から順番にひとつずつ指を上げていくとD-durの音階を演奏することができます。それ以外の音はフォークフィンガリング(例えば人差し指と薬指は押さえて中指は上げるなど)で出すため、D-durの音階以外の音は弱く不安定になります。

ですがそれが一概に悪いことではなく、作曲家の中にはフルートの特性を理解した上で、例えば華やかな部分には出やすい音、はっきりとは言いたくない部分には出にくい音を使い、音楽に色彩感を演出していました。

ちなみに京都人が来客に「ぶぶ漬け(お茶漬けのこと)でも食べていかはります?」と言う時は「もうそろそろ帰って」という意味です。

京都人の私には“はっきりとは言わない”という感性が備わっているので、フォークフィンガリングが続くパッセージではぶぶ漬けっぽい気持ちになることも。(ん?ちょっと違うかしら…!?)

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話はそれましたが、ついつい利便性を求めたくなるというのが人間という生き物の性。そしてそれがゆえに、世の中は進歩してきました。
音楽でもその流れは同じで、フルートにおいてもそれまで演奏しづらかった調をもっと“便利に”演奏できる楽器の開発が進むことになります。

すなわち複数のキーを持つ多鍵式フルートの誕生です。

古典派の時代に活躍し、クラシカル・フルートとも呼ばれる多鍵式フルートですが、作られ始めたのは1750年代のイギリスだと考えられています。それから他の地でも多鍵式フルートが作られ始め、そしてどんどんとキーの数が増えていき、4鍵式、6鍵式などなど・・・さまざまな多鍵式フルートが乱立する時代に突入します。

(第3話に続く)

※3月30日に福岡のメディアファイブサロンで、フルートとギターの饗宴「バロックから古典へ」を開催いたします!フルート・永野伶実とギター・松本富有樹で、バロックから古典の音楽を、それぞれの時代の楽器でお楽しみいただくコンサートです。
このコンサートでは、バロック・フルートとクラシカル・フルートを演奏いたします。
フランスで楽器製作者、作曲家として大活躍したオトテールの作品や、ウィーン古典派に作曲家、ギタリストとしても活躍したマティエカの作品などを演奏いたします。
2つのフルートと、バロックと古典それぞれの時代のギターの音色を一晩でお楽しみいただけます。

ご来場お待ちしております!

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