第11回新・福岡古楽音楽祭を終えて【太田 耕平】

去る10月12-14日、第11回新・福岡古楽音楽祭が開催されました。
今回のコラム筆者である私(太田)は、昨年より実行委員としても携わらせていただいているので、今回は企画段階からの経緯を含め、お伝え出来たらと思います。

前田明子さん率いる「十八世紀音楽祭協会」という音楽愛好家の手によって運営されていた「福岡古楽音楽祭」を引き継ぎ、現在のアクロス福岡・音楽祭実行委員共同主催の「新・福岡古楽音楽祭」の形になりはや10年がたち、企画段階において様々な課題が浮き彫りになりつつありました。予算減少、コロナ禍以降の参加者の減少、参加者の高齢化、などなど。
そんな中で私が思い当たった理想は2つ、「若い世代に新しい風を吹かせてもらう!」「原点である【おぐに古楽祭】のようなプロ・アマ一体となった身近な祭典に立ち返る」。
この新・旧両方向の延長線にこそ、古楽祭の未来はあるのではないか、そんなことを思いつつ企画を進めてきました。

今年のメインゲストは、コルネットの上野訓子さん率いる「アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィア-ニ」の皆さん。上野さんには企画段階から色々と詳細に至るアイデアを出していただいて、本当にお世話になりました。メインゲストに海外でも東京でもなく、九州に比較的近い関西で活躍される皆さんをお呼びできたことも、何か親近感を感じることができた良い一面だったように思います。加えて、関東にて異彩を放つ声楽古楽アンサンブル「エクス・ノーヴォ」を率いる福島康晴さん、それからまさに読んで字のごとくの活躍をされる新進気鋭ファゴット奏者、長谷川太郎さんのご参加により、音楽の深みと広がりが増したように思います。私は一度、福島さんの「エクス・ノーヴォ」の演奏会にご一緒させていただいたことがあり、その時の福島さんの指揮、音楽解釈の深さに非常に感銘を受けていました。今回はテノール歌手として表現豊かな歌を披露していただきましたが、またいずれ、合唱指導等の方面でも再登場していただければと思っています。長谷川さんは、その躍動的な演奏はもちろん、「昔の楽器」講座でファゴットの歴史を紐解かれた90分は本当に素晴らしいものでした。賛助として共演させていただいたので見せてくれたのですが、この90分の講座の為に長谷川さんは分刻みの長大な台本を用意されていたのです!!中世カンティガからアンパンマンのテーマまで、演奏を通してファゴットの魅力を伝えてくれて、「まさに若い世代の新風」を感じさせてくれました。

新風、で言うと忘れてはいけないのが今回のもうひとつの白眉、ヴァイオリンの大内山薫さんによる子供のための講座「カノンを古楽奏法で弾いてみよう」です。


15名の子供さんが参加されて、最後に「古楽ステージ」での発表。私は残念ながら聴けなかったのですが、感動的な演奏だったとのことです!中にはバロック弓で弾きたいと言った子供たちや、本番でも果敢に古楽奏法にトライする姿があったとのこと。確実に未来につながるこの企画、今後も絶対に絶やしてはいけない!と思いました。

最終日14日の「室内楽コンサート」【世俗の愛】では、ゲスト演奏家のみなさんに加えて中川詩歩さん(ソプラノ)、田尻健さん(テノール、合唱指揮)、私(テオルボ)、そしてスペシャルゲストに前田りり子さん(ルネサンスフルート)と、地元の演奏家が加わり、最後には福岡の古楽界を昔から盛り上げ続けてきたアマチュア古楽合唱団「コーロ・ピエノ」も舞台に上がり、大団円の(合唱指揮者の小躍り付きで!?)終演を迎えることができました。アンコールではお客様の手拍子まで自然と沸き起こり、大盛り上がりの舞台となりました。

来年はもっともっと、皆さんの交流の場が増え、喜びに満ちた音楽祭になるよう尽力させていただきます!

全国の皆さん、是非、2025年10月16-19日は福岡へお越しください!!

太田 耕平

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