1600年の天下分け目の戦いから約150年間、江戸時代の前半がバロック時代に あたります。西洋音楽史としてのバロックの始まりが一般的に1600年とされるのは、その頃に最初のオペラが作られた事に加え、なんと言ってもジュリオ・カッチーニの作品集「新音楽」が1601年(新暦では1602年)に出版された事に拠ります。それまでの多声音楽の技法とは異なる、モノディー様式による作曲法や歌唱法や歌う際の装飾の方法も譜例を用いて細かく記し、以降の音楽を大きく変える影響を及ぼした「新音楽」。卓越した歌手であったカッチーニは、歌詞の内容や曲の持つ 情感をよく伝えることで聴き手の心の情緒を動かすことを目指し、一つの旋律が、即興的に付けられた和声を伴う低声部に支えられ展開するモノディー様式を提唱・ 実践しました。この低声部はバロック期を通じて用いられる通奏低音となり、種々の器楽も発展させていきます。
以前の美の規範を離れ、旋律が単声として際立ち、人が日常そうするように歌や器楽が嘆きや喜びや様々な感情を存分に表現する。当時の人々にとって、これはもう単なる目新しさを超えた「シン・音楽」だったかも…!? 来る6月10日、お楽しみ戴ければ幸いです。
リコーダー 大坪由香